東京臨海病院麻酔科部長赤あか田だ 信しん二じ◆東京メトロ東西線「葛西」駅から京成バス臨海病院線 「東京臨海病院行」約12分◆JR京葉線「葛西臨海公園」駅から徒歩約20分日本私立学校振興・共済事業団 直営医療施設東京臨海病院〒134-0086東京都江戸川区臨海町1-4-2☎03(5605)8811(代表)http://www.tokyorinkai.jp◆東京メトロ東西線「西葛西」駅から都バス「臨海町二丁目団地前行」約10分「東京臨海病院前」下車19皆さんが手術すると決まった時、やるべきことの一つとして「禁煙」が挙げられます。喫煙の害は一般的にも多く知られていますが、手術においても様々な影響を及ぼします。もし、ご自身が吸っていなくても、ご家族が吸っているのであれば、受動喫煙になり、喫煙している人と同じように影響を受けますので、ご家族の禁煙も重要になります。タバコに含まれる有害物質は「ニコチン」「一酸化炭素」「一酸化窒素」「タール」などが挙げられますが、それぞれの有害作用を列挙します。ニコチン:心拍数や血圧を上げ、心臓の酸素消費量を増加させます。血管を細くし、組織の血流を阻害します。気道分泌物(痰たん)を増加させ、気管支を細くします。一酸化炭素:体中に酸素を送っているヘモグロビンに結合し、組織での酸素利用を難しくします。筋肉での酸素貯蔵量を減少させ、エネルギー産生を抑制します。一酸化窒素:もともとの作用としては血管拡張をすることで、血の巡りをよくする効果があるのですが、慢性的に一酸化窒素にさらされることにより結合組織の破壊を促進してしまいます。タール:気管を収縮させ、気道の易 い しげき せい刺激性を高め、線毛運動を抑制します。これらの有害作用の結果、手術後の合併症発生率が非喫煙者と比べ、非常に高くなります。具体的には、「ニコチン」「一酸化炭素」の有害作用で挙げたように、血の巡りが悪くなるのに加え、酸素の利用が難しくなっていますので、傷が治りにくくなったり、全身の感染症を引き起こしたり、脳の障害を起こして、後遺症が残ることもあります。また、「ニコチン」「タール」の有害作用で、痰の量が増え、肺の奥にたまった痰を外に出す役目をする線毛の働きも弱っているため、痰の喀かくしゅつ出がしづらくなります。この結果、術後の呼吸苦を起こし、さらには肺炎を引き起こすことにより、入院期間が長引くこともあります。これらの合併症を防ぐために禁煙が重要です。禁煙期間が3週間を超えると、術後の創部合併症が減少してきます。さらに4週間以上で術後の肺合併症の頻度が低下してきて、禁煙期間が長くなればなるほど、効果が上がってきます。喫煙する人は、手術の4週間以上前から禁煙することが望まれます。公益社団法人 日本麻酔科学会でも一般の人向けに「周術期禁煙啓発リーフレット」(https://anesth.or.jp/files/pdf/kinen-p-3_20210121.pdf)を作成していますので、手術を受ける人はぜひご覧になってください。メディカル・インフォメーション手術前には禁煙を!
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