レター 2022年 春号
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19東京臨海病院耳鼻咽喉科医長山やま口ぐち 航わたる◆東京メトロ東西線「葛西」駅から京成バス臨海病院線 「東京臨海病院行」約12分◆JR京葉線「葛西臨海公園」駅から徒歩約20分日本私立学校振興・共済事業団 直営医療施設東京臨海病院〒134-0086東京都江戸川区臨海町1-4-2☎03(5605)8811(代表)http://www.tokyorinkai.jp◆東京メトロ東西線「西葛西」駅から都バス「臨海町二丁目団地前行」約10分「東京臨海病院前」下車●難病疾患の一つ 慢性副鼻腔炎は、蓄ちく膿のう症しょうとも呼ばれており、ウイルスや細菌、アレルギーなどにより、副鼻腔の粘膜に炎症が起こることで発生します。慢性副鼻腔炎には、非好酸球性副鼻腔炎と好酸球性副鼻腔炎があります。現在、非好酸球性副鼻腔炎は、内視鏡手術や抗生剤の進歩によって治療成績が飛躍的に向上しています。 一方、好酸球性副鼻腔炎は、喘息との関連が強く、両側の鼻の中に多発するポリープ(鼻はな茸たけ)と粘ねん稠ちゅうな鼻汁により、高度の鼻閉と嗅覚障害を示す成人発症の難治性副鼻腔炎です。抗生剤や手術治療でも再発を繰り返すことが多いといわれています。 好酸球性副鼻腔炎は治りにくく、長期的な通院が必要になることもあるため、2015年より厚生労働省の難病疾患の一つとされています。難病指定医が診察し、難病指定の基準を満たした場合は難病医療費助成の対象となります。●内服治療と手術加療 好酸球性副鼻腔炎の治療は、内服治療と手術加療に大きく分かれます。内服治療は抗生剤の効果が乏しい場合、嗅覚障害や鼻閉が続く場合に、ステロイドを内服します。ステロイド内服を長期的に行うと副作用が出ることもあるため、慎重に投与量を調整します。手術加療は全身麻酔で内視鏡を用いて行います。術後は鼻の洗浄と内服薬を絡めながら、鼻の様子を見ていきます。●喘息の治療との深い関連 喘息の治療も、好酸球性副鼻腔炎の治療をするうえで非常に重要です。「One airway one disease」という言葉があり、これは上気道・下気道を同一の器官として治療する考え方です。喘息の状態が悪くなれば副鼻腔炎の状態も悪くなり、副鼻腔炎の状態が悪くなれば喘息が悪化する可能性があります。喘息の治療を行う呼吸器内科との連携も大切です。●デュピクセント®による治療 デュピクセント®という生物学的製剤による最新の治療もあり、東京臨海病院でも導入しています。好酸球性副鼻腔炎には、手術加療やステロイド治療にも抵抗性のあるケースもあります。デュピクセント®によって治療することで、長期的なステロイド内服を離脱し、副鼻腔炎の症状が改善し、鼻茸が小さくなるなどの効果が期待できます。デュピクセント®は2週間もしくは4週間に1回皮下に注射をすることで治療を行います。手技は簡単で自宅でも注射が可能となっています。 鼻閉や嗅覚障害などの症状があったら、好酸球性副鼻腔炎の可能性もあるため、専門医への受診をお勧めします。好酸球性副鼻腔炎

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